2026年診療報酬改定で「みなし単位」という仕組みが導入されました。訓練以外の業務が単位として数えられるようになった——これは療法士の働きが認められたということでしょうか。それとも、別の読み方ができるでしょうか。

制度の内容を整理したうえで、メリットとリスクの両面、そして厚労省の意図を考えます。

みなし単位とは何か:制度の整理

療法士1人あたりの1日の標準実施単位数は「18単位」とされています。これまで18単位は「疾患別リハビリテーション料」と「集団コミュニケーション療法」のみで計算されていました。

今改定から、専従の療法士が疾患別リハビリおよび集団コミュニケーション療法以外の業務に従事した場合、その従事時間20分を1単位とみなして実施単位数に加えることが算定要件に加わりました。

対象となる業務は以下の通りです。

📝記録作成
🚶移動時間
👨‍👩‍👧退院時・家族指導
🏠介護施設等への助言
📋 対象は専従の療法士
みなし単位の対象となるのは「専従」のPT・OT・STです。専任の療法士については別途確認が必要です。また、この整理はあくまで「単位数の計算方法」の変更であり、点数の算定とは別の話です。

二面性:素直に喜べない理由

「訓練外の業務も単位として認められた」——一見すると療法士にとってポジティブな変更に見えます。しかし、構造をよく見ると単純には喜べません。

✅ メリット側
記録・移動・家族指導など、これまで「見えない仕事」だった業務が単位として可視化された。専従療法士の業務実態が正式に認められた形。
⚠️ リスク側
みなし単位で18単位に達した場合、個別リハビリの実施単位数が圧縮される可能性がある。「記録で2単位使った」なら個別リハは16単位分しか入れられない計算になる。
⚠️ レセプト請求可否は現時点で未確定
「1単位とみなす」ことと「レセプトで請求できる」ことは別の問題です。記録や移動をみなし単位として請求できるかどうかは、現時点で明確な疑義解釈が出ていません。請求できない場合、これは「評価の拡大」ではなく「個別リハの請求枠を圧迫するルール変更」という解釈になります。施行後も疑義解釈の動向を注視してください。

厚労省の3つの意図を読む

制度の言葉を表面で読むのではなく、「なぜこの設計にしたのか」という視点で読み解くと、3つの意図が見えてきます。

1
業務実態の把握——次の改定の根拠作り
みなし単位によって療法士が「訓練以外に何をしているか」が数値として可視化されます。このデータは次回以降の改定で「療法士の業務実態はこうだった」という根拠に使われる可能性があります。可視化は評価の前段階であると同時に、包括化・削減の根拠作りにもなりえます。
2
訓練一辺倒をやめさせたい
離床を伴わないリハビリへの減算(ベッドサイドリハ10%減算)と合わせて読むと、メッセージは一貫しています。「ベッドサイドで20分の訓練だけをしていればいい時代は終わり」。訓練の質とアウトカムを問い、多様な業務に目を向けさせる方向への誘導です。
3
人手不足対応——療法士を病棟業務全体に組み込む布石
看護・多職種協働加算(療法士が病棟配置に入れる新加算)と方向性が重なります。「療法士が訓練室の外でも役割を持つ」という流れを制度的に後押しする設計です。人手不足の中で病棟業務を多職種で分担する仕組みへの誘導とも読めます。
3つの意図はバラバラではない
業務の可視化→実態把握→次の包括化、という流れが一本の線でつながっています。今回の変更は「終点」ではなく「通過点」と見ておくのが現実的です。

リハ職はどう動くべきか

みなし単位の導入を「業務が認められた」と単純にポジティブに受け取るのは、少し危険です。一方で「罠だ」と過度に構えるのも違います。

まず大事なのは、施設内でみなし単位をどう運用するかを決めることです。記録時間・移動時間を単位として計上することが、個別リハの枠にどう影響するか。管理職と現場で共通認識を持っておく必要があります。

次に、レセプト請求可否の疑義解釈が出るまで慎重に対応すること。施行(6月1日)後も随時出る疑義解釈を確認し、職能団体や都道府県の指導に従うことが重要です。

そして中長期的には、訓練外の業務が可視化されることを、専門性アピールの機会として使うこと。記録や家族指導・連携業務の質と量が見えるようになれば、「療法士はこれだけの業務を担っている」という根拠にもなります。制度をどう読むかよりも、その中でどう動くかが問われています。

この記事のまとめ
  • みなし単位=訓練外業務(記録・移動・家族指導・施設助言)20分を1単位とみなし、18単位の計算に加える
  • 業務の可視化というメリットがある一方、個別リハ枠を圧迫するリスクも存在する
  • レセプト請求可否は現時点で未確定——「みなす」と「請求できる」は別の話
  • 厚労省の意図は①業務実態把握②訓練一辺倒からの転換③病棟業務への組み込みの3つが重なって見える
  • 施設内での運用合意と、疑義解釈の動向注視が当面の対応として重要